日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.42,No.10 (2014)

表題:
食品産業における硬質表面洗浄の理論と実際 [9] 次亜塩素酸ナトリウムの洗浄力(その2)
著者:
福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.42,No.10,pp.533−536(2014)

次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は,食品製造機器の硬質表面に付着した有機物汚れの洗浄除去に最も有効な洗浄剤成分の一つである。次亜塩素酸ナトリウムの洗浄力は次亜塩素酸イオン(OCl-)の濃度に強く依存し,水酸化物イオン(OH-)と併用することにより,強力な洗浄作用ならびに殺菌作用を発揮する。一方,プラスチック製の容器や包装材料,ゴム製シール材に収着した香気成分に対しては,次亜塩素酸イオンと水酸化物イオンの洗浄力では不十分である。たとえば,ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルに収着したリモネンは,高温アルカリ洗浄においても米国食品医薬品局(FDA)の基準値を超える量で残留し,再充填した水に溶出して移香することが指摘されている。第9回目は,PETの表面に付着したタンパク質および内部に収着したリモネンの洗浄除去に及ぼす次亜塩素酸イオンと非解離次亜塩素酸(HOCl)の洗浄効果について解説する。

Key words:
Hypochlorous acid(次亜塩素酸)/Permeation of HOCl(次亜塩素酸の浸透)/Polyethylene terephthalate(ポリエチレンテレフタレート)/Limonene(リモネン)/Oxidative degradation(酸化分解).