日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.41,No.6 (2013)

表題:
食品による寄生動物感染症[11] 蠕虫感染症(6)顎口虫
著者:
野中成晃(宮崎大学農学部獣医学科)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.41,No.6,pp.339-342(2013)

顎口虫は,その頭部に頭球と呼ばれる小鉤を備えた膨らみを持つ線虫で,犬,猫,豚などを終宿主として,それらの胃壁や食道壁に体前部を穿入して寄生する。ケンミジンコを第1中間宿主,淡水魚や両生類などを第2中間宿主あるいは待機宿主として生活を営んでいる。国内で人体症例が報告されている種は,有棘顎口虫,ドロレス顎口虫,日本顎口虫,剛棘顎口虫の4種である。人への感染は主に淡水魚の生食と関連し,人が感染すると幼虫は発育せずに体内各所を移行して,皮膚跛行症や遊走性限局性皮膚腫脹を主徴とする幼虫移行症を引き起こす。国内では,第二次世界大戦中および戦後の食糧難の時期にライギョの生食による有棘顎口虫症が多発したが,1980年代以降は,中国からの輸入ドジョウの生食による剛棘顎口虫症,国産ドジョウやヤマメ,ブルーギルなどの生食によるドロレス顎口虫症および日本顎口虫症が報告されている。

Key words:
Gnathostomiasis/epidemiology/Japan/Review.