本稿では現時点で発生が報告されている,いくつかの代表的な薬剤耐性の真菌種とその分子メカニズム,並びに新興真菌症の問題について概論をまとめた。ヒト真菌症の薬剤は,標的を大別して3クラスしか存在せず,自然耐性,獲得耐性を有する菌種/菌株の出現は,他の微生物よりも一層深刻な状況に陥りやすい。主に,Aspergillusにおけるアゾール系薬剤耐性の増加,カンジダ症においては,Candida non-albicansの菌種における感受性の低下,すべての抗真菌剤が効かないCandidozyma aurisの系統,白癬菌種でのテルフィナフィン,アゾール低感受性株の世界的な拡大がトレンドとなっている。耐性機序の分子基盤の解明とともに,迅速診断法および新規抗真菌薬の開発を両輪として進めることが,真菌感染症対策の鍵となるだろう。