日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.52,No.2 (2024)

表題:
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線
[4]抗菌ペプチドと皮膚常在菌叢
著者:
冨田秀太(岡山大学病院ゲノム医療総合推進センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.2,pp.61−64(2024)

近年,抗菌ペプチドの産生や自然免疫システムとEGFRシグナルとの相互作用が明らかになり,皮膚の恒常性維持にEGFRシグナルが中心的に関与している。一方,EGFRシグナルの異常は様々ながんの発症・進展にも関与しており,EGFRを標的とした治療法は非小細胞肺がん患者や大腸がん患者の治療に承認されている。EGFR標的治療による副作用としてざ瘡様皮疹が知られているが,その発症メカニズムは未だに不明な点も多い。筆者らは,EGFR標的治療によるざ瘡様皮疹の発症と皮膚細菌叢の関連性を明らかにすることを目的として,EGFR標的治療をうけたがん患者および健常者の額からサンプルを採取し,16S rRNAシーケンシングにより,細菌叢を解析した。がん患者の細菌叢の変化を解析したところ,EGFR標的治療により,アクネ菌の相対量は87%の症例で減少しており,皮膚細菌叢のdysbiosisが皮疹の発症と関連していることを明らかにした。

Key words:
Antimicrobial peptides(抗菌ペプチド)/Skin microbiome(皮膚細菌叢)/EGFR signal(EGFRシグナル)/Skin rash(皮疹)/Dysbiosis(ディスバイオーシス:細菌叢のバランス異常).