日本防菌防黴学会

学会のご案内

関連情報

  • English

日本防菌防黴学会誌

Vol.51,No.10 (2023)

表題:
家庭の安全・安心科学
-家庭における微生物汚染とその対策-
[2]家庭における潜在的微生物危害要因とその解明に向けた研究アプローチの現状
著者:
矢野剛久(花王(株)安全性科学研究所)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.10,pp.611−614(2023)

何らかの経路を介して微生物が引き起こす,人の健康が損なわれる現象や,人を取り巻く環境の価値が損なわれる現象を総称して微生物危害と定義する。このうち,本項では特に家庭で生じる人の健康が損なわれる危害を中心に述べる。こうした危害は,食品に係る危害が最も馴染み深く,様々な知見が蓄積している。そこで,食品に係る危害を例に,家庭における微生物危害が生じる潜在的な要因について述べる。一方,食品以外の危害については,どのような微生物がどのように健康を損なうか知見が乏しい。しかし,次世代シーケンサーでその場のあらゆる微生物を一挙に解析出来るようになったことに端を発し,様々な技術の融合や創意工夫により,そうした知見も断片的ながら獲得できるようになりつつある。但し,こうした技術では,現状,微生物危害に係る因果を説明出来ないことが多い。そこで,これら研究アプローチの最新技術動向に触れることで,潜在的微生物危害要因の解明に向けどのような検討をすべきか論じる。

Key words:
Microbial hazards(微生物危害)/Next generation sequencer(次世代シーケンサー)/Microbiome(菌叢)/Exposome(エクスポソーム).