日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.51,No.5 (2023)

表題:
食品の微生物危害要因と対策
[2]チルド食品(袋物惣菜)の微生物危害要因と対策
著者:
小林哲也((地独)北海道立総合研究機構食品加工研究センター,北海道大学大学院水産科学院)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.257−265(2023)

袋物惣菜とは,樹脂製容器への密封と加熱殺菌,10℃以下での保存を組み合わせることで1ヶ月前後保存できる惣菜を指す。原則10℃以下で保存するチルド食品のうち,乳製品と食肉製品は食衛法によって製造基準や微生物規格が定められている。また,惣菜や麺類,漬物等は各々の衛生規範にそれらの指針が記載されていた。一方,袋物惣菜の製造基準や微生物規格は示されておらず,HACCPに基づく衛生管理を行うための管理基準の設定が難しい。10℃以下で増殖する細菌のうち,重篤な食中毒を引き起こすE型ボツリヌス菌の芽胞は,90℃で10分間の加熱で殺滅できる。セレウス菌芽胞はE型ボツリヌス菌芽胞よりも耐熱性が高く,保存中に発芽・増殖する可能性がある。いくつかのPaenibacillus属細菌も10℃以下で保存する加工食品の腐敗原因菌である。袋物惣菜の製造における管理基準の設定には,このような芽胞形成菌の性状や制御に関する知見が重要である。本稿では,10℃以下で増殖するBacillus属細菌やPaenibacillus属細菌の性状や制御について紹介する。

Key words:
Refrigerated processed foods(冷蔵加工食品)/Psychrotrophic spore forming bacteria(耐冷性芽胞形成菌)/Bacillus spp.(バシルス属細菌)/Paenibacillus spp.(パエニバシルス属細菌).