日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.51,No.5 (2023)

表題:
2-ブチルオクタン酸含浸不織布袋による小麦粉へのケナガコナダニの侵入阻止(原著論文)
著者:
野瀬美穂,森田 洋(北九州市立大学大学院国際環境工学研究科),中島 淳,森田洋司(日星産業(株))
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.211−218(2023)

ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)は室内塵性ダニの一種であり,小麦粉などの広範囲の食品から発見されている。室内塵性ダニの防除法として知られているスプレー剤などは食品に直接使用できないため,ダニ防除効果を持つ食品保存用パッケージの開発を目指した。ダニ防除効果を持たせる薬剤として,先行研究で効果が認められた2-ブチルオクタン酸(iso-C12)に着目した。iso-C12は不織布に含浸させることでより高いダニ防除効果を発揮することが分かっているため,3種類の素材の異なる不織布を用いて忌避試験を行い,より適した素材を選定した。忌避試験の結果,レーヨン50%・ポリエステル50%の不織布で最もiso-C12のダニ防除効果が発揮されることが明らかとなった。そこで,同不織布を用いて侵入阻止試験を行ったところ,ダニの侵入を99.1%阻害した。さらに袋状に形成した不織布で簡易的な実証試験を行った結果,iso-C12処理不織布袋では相対忌避率が100%を示し,居住空間で実証試験を行った結果でも92.3%の相対忌避率を示した。また,ケナガコナダニの体色はiso-C12(0.77 v/v%)を処理することで褐変した。本研究では,iso-C12含浸不織布袋が食品の保存に有用であることが示唆された。

Key words:
Tyrophagus putrescentiae(ケナガコナダニ)/Mite control effect(ダニ防除効果)/2-butyloctanoic acid(2-ブチルオクタン酸)/Wheat flour(小麦粉)/Nonwoven fabric(不織布).