日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.50,No.10 (2022)

表題:
Biocontrol Science Vol.27 No.2 和文解説
低温加熱によるCladosporium sphaerospermum 分生子の死滅と液胞損傷
著者:
堀切茂俊(大阪府立大学大学院工学研究科量子放射線系専攻,パナソニックエコシステムズ(株)),原田真美(大阪府立大学大学院工学研究科量子放射線系専攻),朝田良子,古田雅一(大阪府立大学大学院工学研究科量子放射線系専攻,大阪府立大学研究推進機構微生物制御研究センター),坂元 仁,土戸哲明(大阪府立大学研究推進機構微生物制御研究センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.50,No.10,pp.441−442(2022)

Cladosporium sphaerospermum分生子の熱死滅挙動を検討したところ,その死滅速度のアレニウスプロットの結果から47℃付近の加熱温度を境に様相が異なり,高温側では熱死滅に典型的な高い活性化エネルギー値をもつ反応特性を示したが,低温側ではかなり低い活性化エネルギー値を示した。この低温加熱による特異的な死滅には生物学的な分解反応が関与することを想定し,細胞形態の変化をみるためキナクリンによる液胞染色による顕微鏡観察を行ったところ,細胞内の液胞が破壊されることがわかった。高温側では顕著な液胞破壊はみられず,低温側では液胞プロテアーゼの細胞質への漏出が認められ,さらに液胞破壊による細胞質のキナクリン染色率と死滅率との間で相関が認められた。得られた結果から,低温加熱によって本菌分生子にオートファジー様細胞死が誘発されるものと推察した。

Key words:
Cladosporium sphaerospermum conidium/Vacuole injury/Thermal death.