日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.50,No.1 (2022)

表題:
微生物による劣化 −繊維,金属,木材,コンクリート,紙等−
[6]微生物による文化財の劣化と対策~古墳・洞窟壁画の微生物劣化~
著者:
佐藤嘉則(東京文化財研究所)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.50,No.1,pp.19−24(2022)

本稿では,屋外環境にある文化財のなかでも古墳や洞窟にある壁画に焦点を当て,現地保存における微生物劣化について国内外の事例を紹介しながら,現状と今後の課題について整理を試みた。国内では,高松塚古墳壁画の微生物劣化について,屋外環境においては壁画の微生物劣化を制御することが困難であることを概説した。また,フランスのラスコー洞窟壁画の微生物劣化について概説し,高松塚古墳壁画と同様の課題があることを述べた。その一方で,虎塚古墳壁画は顕著な微生物劣化が確認されずに現地保存と公開が行われているが,この理由は不明であった。そこで,壁画に由来する試料で行われた微生物叢解析の結果に基づき生態学的な考察を行い,顕著な微生物劣化が認められない壁画は埋蔵状態に近い保存環境で,石室内生態系が攪乱を受けることなく安定的に維持されていることが理由ではないかと推察した。最後に現地における壁画保存の在り方について総括した。

Key words:
Cultural properties(文化財)/Microorganisms(微生物)/Microbial deterioration(微生物劣化)/Tumulus(古墳)/Cave(洞窟)/Wall paintings(壁画).