日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.49,No.11 (2021)

表題:
再生医療における微生物汚染と二酸化塩素ガスを用いた新たな対策
著者:
曾川甲子郎(大阪大学大学院 医学系研究科 空間環境感染制御学共同研究講座)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.563−568(2021)

近年,胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞などの幹細胞研究の急速な発展に伴い,再生医療における細胞培養が担う役割はますます増大している。細胞を製品とする場合,従来の医薬品のように最終滅菌法やろ過滅菌法にて製品を無菌化できないため,作業環境の衛生管理がより一層重要となる。現在,細胞培養加工施設の清浄度は,壁面の清拭と気流管理により維持管理が行われているものの,人や物に伴って侵入した微生物を完全には防ぎきれていないのが現状である。培養作業を行う人,培養する細胞,更には環境への影響がなるべく少なく,高い除菌効果を得ることが可能な薬剤の開発が望まれている。本項では,再生医療分野での衛生管理方法の現状をはじめ,新たな環境消毒剤として期待されている二酸化塩素(ClO2)の有効性と安全性に関する研究成果,更には,低濃度のClO2ガスを用いた細胞培養設備の衛生管理方法について解説する。

Key words:
Chlorine dioxide(二酸化塩素)/Hygienic management(衛生管理)/Regenerative medicine(再生医療)/Mesenchymal stem cells(間葉系幹細胞)/Senescence(老化).