日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.49,No.4 (2021)

表題:
持続社会での木材の長期使用
[2]森林・生活空間における木材と腐朽菌との関係
著者:
桃原郁夫((国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 関西支所)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.181−187(2021)

樹木が他個体との生存競争に打ち勝ち,より多くの光エネルギーを獲得するために創り出した仕組みが樹木である。樹木は木材にリグニンを付与することで,木材の耐久性を高め,カビなどの微生物から攻撃から自身を守ることに成功した。一方,そのリグニンに守られた木材を分解できるように進化したのが木材腐朽菌であり,両者は1億年以上にわたって,それぞれが進化しながら森林内で関係を結んできた。木材腐朽菌は通常森林内で生活し,胞子や菌糸の形で森林内を移動するが,近年の生活空間の拡大により森林と生活空間との境界を越えて胞子が生活空間に侵入することもある。生活空間における空気をサンプリングし,その空気の内にある木材腐朽菌の活性を調べた結果,東京の中心部であっても胞子が存在していることや札幌市と熊本市とでサンプリングした空気内に含まれる木材腐朽菌の活性に大きな差がないことなどが明らかになった。

Key words:
Forest(森林)/Urban(都市)/Wood(木材)/Wood-decay fungi(木材腐朽菌).