日本防菌防黴学会

学会のご案内

関連情報

  • English

日本防菌防黴学会誌

Vol.48,No.8 (2020)

表題:
紙上ミニシンポジウムⅠ 〜水の衛生管理〜
3.貯水槽水道で滞留した水道水からのレジオネラ属菌および関連微生物の検出状況
著者:
大河内由美子(麻布大学 生命・環境科学部),泉山信司(国立感染症研究所 寄生動物部),前川純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.377−382(2020)

大規模建物を中心に普及した貯水槽水道では,水質管理が適切でないと残留塩素が消失し,レジオネラ属菌に代表される有害微生物が増殖する。本研究では,貯水槽水道内の使用頻度の低い給水栓から初流水を採取し,レジオネラ属菌とその宿主である自由生活性アメーバの検出状況を調べた。その結果,約3割の給水栓からレジオネラ属菌が検出された。再増殖が起こりやすい場所を絞り込むため,検出頻度の高かった3つの受水槽について微生物調査を実施したが,いずれからもレジオネラ属菌は不検出,かつ内壁面のバイオフィルム形成も抑制されていたことから,汚染は各給水栓近傍で局所的に進行したと考えられる。レジオネラ属菌陽性試料では遊離塩素がほぼ消失していた一方,自由生活性アメーバは遊離塩素が0.4 mg/Lを超える試料からも検出されたことから,レジオネラリスク低減に向けて宿主となる自由生活性アメーバに関する情報蓄積も必要と考えられる。

Key words:
Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Free-living amoeba(自由生活性アメーバ)/Water distribution systems(給水システム)/Reservoir tank(受水槽)/Chlorine residual(残留塩素).