日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.12 (2019)

表題:
損傷菌[8]
医療機器・医薬品の滅菌バリデーションと損傷菌
著者:
新谷英晴(中央大学理工学部)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.12,pp.513−518(2019)

医療機器ならびに医薬品(総称して医療用品と称す)は最終滅菌がなされて後出荷される。その際には生物指標(BI)を用いて無菌性保証水準(sterility assurance level, SAL)の10−6の達成が確認されていなければならない。滅菌後にも生育している菌の大抵は損傷菌である。損傷菌の栄養要求性は健常菌の栄養要求特性とは異なる。健常菌の生育性能は培地性能に殆ど左右されないが損傷菌は顕著に左右される。その意味で再現性のある滅菌バリデーションを達成するにあたり損傷菌の培養条件,培地特性が健常菌のそれらに代わって検討されなければならない。さもないと滅菌バリデーションに失敗する。このことは再現性の有る医療用品の無菌性保証の達成に不可欠となる。培地に対して各種栄養剤を添加することで損傷菌の生育回復に与える効果が検討され,ある種の栄養剤の添加で再現性のある無菌性保証達成に必須であることが判明した。また各種市販培地のメーカー間,ロット間ならびにバッチ間のばらつきを一定の栄養剤の添加でなくせることが判明した。これらのことは高圧蒸気,乾熱,エチレンオキサイドガス,放射線ならびに電子線滅菌で暴露され,損傷を受けた芽胞を用いて確認された。滅菌方法が異なっても,アミノ酸混合物,グルコースならびにカルシウムを添加することで損傷菌の生育性能は顕著に改善され,再現性のある滅菌バリデーションが達成できることが判明した。

Key words:
Sterilization validation(滅菌バリデーション)/Injured microorganisms(損傷菌)/Sterility assurance(無菌性保証)/Auxotreophic characteristics(栄養要求性)/Biological indicator(生物指標).