日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.10 (2019)

表題:
物理的微生物制御技術の今とこれから[7]
圧力の利用:高圧加工による非熱的殺菌
著者:
山本和貴(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.10,pp.415−422(2019)

高圧力の利用により,食品高圧加工が実現した。非熱的操作により,微生物不活性化以外に,貝類・甲殻類の開脱殻,液体含浸,生体高分子(蛋白質,澱粉等)の変性等が可能である。食品加工での用途は,微生物不活性化が主で,細菌が対象となることが多い。熱による化学変化が抑制され,密度が最大化する操作であり,分子クラウディング,蛋白質・膜・DNAの構造変化,酸化ストレス等が影響因子として挙げられる。高圧処理で微生物を不活性化する際には,高圧加工独自の視点が必要である。高圧損傷後の回復,低温高圧処理の殺菌効果,中高圧処理による静菌効果の活用,独特な芽胞の不活性化手法,真菌類(黴,酵母)・ウイルス・寄生虫への効果にそれぞれ留意して,技術を有効に活用する必要がある。食品高圧加工に関する日本での技術普及は,十分とは言い難いが,公正な貿易の推進の観点から,日本での態勢構築が急務である。

Key words:
High hydrostatic pressure(高圧力)/Nonthermal pasteurization(非熱的殺菌)/Injury(損傷)/Inactivation(不活性化)/Molecular mechanisms(分子機構).