Vol.47，No.5 (2019)

表題：

滅菌及び抗菌処理を行った細菌の走査型電子顕微鏡による形態変化観察（原著論文）

著者：

射本康夫，西田倫希（（一財）日本繊維製品品質技術センター，大阪大学大学院工学研究科），中嶋絵里（（一財）日本繊維製品品質技術センター），清野智史，豊田桃子，中川 貴，山本孝夫（大阪大学大学院工学研究科）

掲載：

日本防菌防黴学会誌，Vol.47，No.5，pp.183−189（2019）

本研究は，抗菌剤の細菌への作用機構を検討するための実験的手法として，走査型電子顕微鏡（SEM）の適用可能性について検討を行った。大腸菌または黄色ぶどう球菌を用いて，一般的な滅菌法や抗菌剤で処理された細菌のSEM観察を行った。また，金属銀ナノ粒子により処理された大腸菌の生菌数の経時変化を評価し，その各段階における細菌の形態と比較することで，作用機構を考察した。大腸菌ではそれぞれの処理に対して特徴的な損傷が見られた。一方，黄色ぶどう球菌では，一部の処理では際立った損傷を示したものの，他の処理では殆ど形態や表面構造の変化は見られなかった。また金属銀ナノ粒子を大腸菌に作用させた場合には，菌の形態や表面構造に影響は見られなかった。本研究の結果，グラム陰性菌とグラム陽性菌での作用機構が異なる可能性があること，第二に，薬剤の組成が同様の場合においても，濃度，作用時間により異なる形態変化を示す可能性があることが示唆された。

Key words：

Scanning Electron Microscope（走査型電子顕微鏡）/SEM observation（SEM観察）/Antibacterial agents（抗菌剤）/Silver nanoparticle（銀ナノ粒子）/Morphological change（形態変化）．