日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.2 (2019)

表題:
「ベトナムにおける薬剤耐性菌の現状とその対策」[11]
~地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)を通して~
食品の薬剤耐性菌と残留抗菌性物質モニタリングシステムの構築
著者:
長谷 篤(大阪健康安全基盤研究所天王寺センター 微生物課),原田和生(大阪大学大学院薬学研究科 附属薬用植物園)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.2,pp.61−65(2019)

ベトナムにおける薬剤耐性菌の汚染実態は日本国内とは異なり,ヒト,畜産物,魚介類など汚染率が極めて高いことが明らかになっている。また,畜水産食品に多種類の抗菌性物質が高濃度に残留している実態も明らかになっている。本稿では,ベトナム国内における薬剤耐性菌と抗菌性物質のモニタリングシステムを構築するために行った試行的モニタリング調査について報告した。2014年6月から2016年11月までハノイ,ニャチャン,ホーチミンの3都市の小売店,スーパーマーケットおよび卸売市場における市販食品(淡水エビ,淡水魚,豚肉,鶏肉)のESBL産生大腸菌とアンピシリンのモニタリング調査を実施した。ESBL産生大腸菌はいずれの地域でも鶏肉と豚肉における検出率は高く(鶏肉55~80%,豚肉50~75%),淡水エビと淡水魚の検出率は両者に比べると低かった。食品試買サイト(卸売市場,スーパーマーケット,一般小売店)での検出率に差はなかった。アンピシリンについては,2014年から2015年にかけて検査した計648検体中から11検体で検出された。アンピシリンは分解されやすく,畜水産周辺環境(水)からその分解物が高濃度に検出されているが(残留抗菌剤分布の解明の項参照),食品検体にも一部残存していることが判明した。
本モニタリング調査で作成した検査プロトコールは出来るだけシンプルで大型機器などを使用せず,現在のベトナム国内の通常の検査室でできるものにし,ベトナム語と英語に翻訳され,ベトナム厚生省に提出した。

Key words:
ESBL producing Escherichia coli/Ampicillin/Monitoring system/Vietnam.