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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.2 (2019)

表題:
新興・再興感染症[13]
腸管出血性大腸菌感染症
著者:
里村厚司(日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.2,pp.53−59(2019)

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症は,感染症法の三類感染症として全数把握の対象疾患であるため,医師は,診断次第,早急に保健所に届出の必要がある疾患である。EHEC感染症は,必ずと言って良いほど毎年,多くが夏に発症し,その上集団発生する事例も多い。特にEHEC感染症は,溶血性尿毒症症候群を併発し,生命に危険がおよぶこともあり話題となる。1990年埼玉県浦和市(現在のさいたま市)の幼稚園での,井戸水を原因としたEHEC感染症O157集団発生事件以降,文部科学省や厚生労働省も種々の対策を施している。肉の生食を全面に禁止し以降のEHEC感染症(HUSも含む)による死亡者数は,減少しているものの,毎年2000人以上(2010年〜2016年)のEHEC感染症の有症状者が発生している。単に,肉の生食の規制をすれば,EHEC感染症が極端に減るという単純なことではなく,最近のEHEC感染は予想もしないような食物からEHEC感染症に罹患したりと複雑化しているようにも思える。そのようなEHEC感染の知見を概説する。

Key words:
Enterohemorrhagic Escherichia coli infection/Hemolytic-uremic syndrome/O157/O111/O104.