日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.45,No.9 (2017)

表題:
ステンレス鋼表面に吸着したタンパク質の除去における亜塩素酸ナトリウムの洗浄作用(原著論文)
著者:
髙橋和宏(岡山県工業技術センター,三重大学大学院生物資源学研究科),田中礼士,福㟢智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.45,No.9,pp.437−444(2017)

ステンレス鋼表面に吸着した牛血製アルブミン(BSA)の除去における亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)の作用について,H+またはOH−の洗浄作用が発現しないpH 4.0~10.0の範囲で検討した。BSAの除去率はNaClO2水溶液のpHの低下とともに,またNaClO2の上昇とともに著しく上昇した。pH 4.0と5.0に調整した2.1M NaClO2水溶液を用いたとき,95%以上の除去率が得られた。NaClO2の洗浄効果のpH依存性は,NaClOのpH依存性とは大きく異なった。pH 4.0の0.09M NaClO2水溶液を用いた洗浄で得られた一次脱着速度定数(k)はアレニウス型の温度依存性を示した。kの見掛けの活性化エネルギーは120kJ/molと概算された。ゲルろ過クロマトグラフィー分析の結果,BSA分子はNaClO2によって部分的に幾つかの断片に分解されており,分解の程度はNaClO2水溶液のpHの低下とともに増加することが示された。以上の結果から,NaClO2水溶液の洗浄力は非解離型HClO2の酸化分解作用に強く依存することが示された。

Key words:
Sodium chlorite(亜塩素酸ナトリウム)/Undissociated chlorous acid(非解離亜塩素酸)/Cleaning action(洗浄作用)/Decomposition of protein(タンパク質の分解)/Stainless steel (ステンレス鋼).