日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.43,No.2 (2015)

表題:
食品の微生物変敗防止技術と制御[12] 水産加工食品の微生物変敗と制御
著者:
久田 孝(東京海洋大学大学院海洋科学系)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.43,No.2,pp.65−69(2015)

食品の中でも特に,魚類は筋肉のもろさ,付着微生物の多さ,低温域でも自己消化酵素の活性が高いことなどから,自己消化が進み,腐敗・変敗を起こしやすい食材である。生鮮魚から多く検出されるのはビブリオ科の細菌であるが,低温貯蔵ではPseudomonas属,Shewanella属など低温に強い菌が優勢となる。これらを抑制するためにガス置換包装(MAP)を施すと,乳酸菌およびCO2耐性のPhotobacterium phosphoreumなどが優勢となる。魚肉は炭水化物が少なく,タンパク質および遊離アミノ酸,ペプチドが多く,トリメチルアミンオキサイド(TMAO)が多く含まれている。筋肉中の内在性酵素により,自己消化が進むと,腐敗を起こさせる菌群はアミン類,アンモニア,有機酸,硫化物をアミノ酸から生成し,これらが腐敗,変敗臭の原因となる。腐敗・変敗の防止のためには微生物の増殖を抑制することが必須であり,スモークサーモンなどでは乳酸菌による制御法が報告されている。

Key words:
Sea foods(水産物)/Spoilage(腐敗・変敗)/Auto lysis(自己消化)/Lactic acid bacteria(乳酸菌).