1996年に米国疾病管理予防センター(CDC)が,"標準予防策"の概念を発表したが,この概念を取り入れて以来,わが国の医療現場での感染対策は大いに進歩した。一方わが国の医療行政においても医療関連感染対策は,近年特に重要視されるようになってきており,2012年の改訂診療報酬では「感染防止対策加算」,「感染防止対策地域連携加算」として,入院患者1人あたり最高400点の診療報酬加算が認められることとなった。これらの政策を通じて,医療現場における感染対策に対する意識は格段に進歩しつつあるが,他方メチシリン耐性黄色ブドウ球菌をはじめとする薬剤耐性菌による医療関連感染の蔓延は,多くの病院で未解決のままである。本稿では医療関連感染対策について,現在わが国の医療現場で実際に行われている対策を中心に概説したいと思う。