Vol.42，No.6 (2014)

表題：

食品産業における硬質表面洗浄の理論と実際
[5] 化学的洗浄力

著者：

福﨑智司（三重大学大学院生物資源学研究科）

掲載：

日本防菌防黴学会誌，Vol.42，No.6，pp.309－316（2014）

化学的洗浄力は，いわゆる洗浄剤の持つ作用力である。湿式洗浄における水は，媒体であると同時に基盤的な洗浄力となるが，当然のことながら水の溶解力だけでは汚れの全般的な除去力は不足している。特に，水は油性汚れや不可逆的に付着したタンパク質汚れに対する溶解力を持たない。洗浄剤は，水の短所を補い，汚れと被洗浄体の界面状態を変化させることにより，水と物理的洗浄力による洗浄の進行を大きく促進させる。洗浄の効率化ならびに最適化は，既存の洗浄力を効果的に組み合わせることから生まれると言える。すなわち，新規な洗浄システムを考案するためには，化学的洗浄力要素の作用効果を今一度，十分に理解しておく必要がある。第5回目は，化学的洗浄力の各要素が界面で作用効果を発揮する機構を解説する。

Key words：

Chemistry of cleaning（洗浄の化学）/ Surface-active agents（界面活性剤）/ Acid and alkaline agents（酸とアルカリ剤）/ Metal ion-sequestering agents（金属イオン封鎖剤）/ Enzyme-catalyzed reactions（酵素触媒反応）．