日本防菌防黴学会

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防菌防黴誌(和文誌)

Vol. 40, No.10 (2012)



表 題 食品による寄生動物感染症[1] 食品媒介寄生虫感染症-総論・旅行医学における本症-
著 者 大前比呂思(国立感染症研究所・寄生動物部・第3室(輸入・外来寄生虫症))
掲 載 防菌防黴,Vol.40,No.10,pp.649-655(2012)

寄生虫症は,日本国内では稀な疾患となったが,熱帯の途上国では,未だに大きな公衆衛生上の問題で,特に飲食物から感染するものは,感染者が多く旅行者のリスクも高い。また,輸入感染症という面からは,海外で感染した旅行者が日本入国後に発症する場合に加え,寄生虫を保持している動植物(加工品も含む)が輸入される場合についても,考えねばならない。食品に由来する輸入寄生虫症の増加には,海外旅行者数の増加や日本への入国者数の増加が関係しているのはもちろんだが,食品流通システムの国際化や食習慣の多様化も関係している。日本国内で一般的な飲食物の処理法や調理法は,問題となる寄生虫種の感染経路や感染型からみて,海外ではけっして適切とは言い難い。また,食品に由来する寄生虫症の症状は多彩で,潜伏期もはっきりしないことがある。海外での感染予防や水際での防疫はもちろん重要だが,国際的な標準治療が保険適応を受けていない等,国内での診療体制もけっして十分とは言えない。

Key words Protozoa/Helminths/Oral infection/Travelers'diarrhea/Foodborne diseases/Waterborne diseases.