日本防菌防黴学会

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防菌防黴誌(和文誌)

Vol. 37, No.4 (2009)



表 題 次亜塩素酸の殺菌効果に対する pH の影響
著 者 岩沢篤郎,中村良子(昭和大学藤が丘病院臨床病理科),原野 綾,穐山由貴,西本右子(神奈川大学理学部化学科)
掲 載 防菌防黴,Vol.37, No.4, pp.243-252(2009)

次亜塩素酸溶液の殺菌効果は,pH によって影響された。E. coli では検討した全 pH 域において殺菌効果が認められた。S. aureus ではアルカリ側で殺菌効果が低下し,pH11 以上では殺菌効果が認められなかった。S. aureus, P. aeruginosa 共に,KCl より NaCl の方がより低 pH 域から殺菌効果が低下した。また,グルタチオン,システインと次亜塩素酸との相互作用による化学構造変化を 13C NMR で検討したところ,次亜塩素酸は N 原子と相互作用するが,S 原子との相互作用は弱かった。グルタチオンとシステインの次亜塩素酸との相互作用はアルカリ側で弱くなり,pH12 付近では相互作用による化学構造変化は観測されなくなった。以上,次亜塩素酸の殺菌作用はアルカリ側で弱くなり,この結果は次亜塩素酸のシステインやグルタチオンとの N 原子における相互作用に基づくものと考えられた。
Key words Hypochlorous acid(次亜塩素酸)/ Bactericidal effects(殺菌効果)/ pH / Glutathione(グルタチオン)/ Cysteine(システイン)/ NMR.