日本防菌防黴学会

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防菌防黴誌(和文誌)

Vol. 37, No.1 (2009)



表 題 食品の殺菌手法-原理・特徴・現状・課題[9] 物理的手法 (1)食品の加熱殺菌
著 者 土戸哲明(関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科)
掲 載 防菌防黴,Vol.37, No.1, pp.43-49(2009)

加熱殺菌は,おそらく人類が火を使い始めて以来食料の保存に利用されてきたと考えられ,現代においても最も簡便かつ経済的であり,有効な方法である。食品の加熱殺菌では,工学的な(いわば巨視的)視点と微生物学的な(微視的)視点とがある。
前者の視点からは,各種産業発展を基盤として食品の製造技術が進歩するとともに,大量生産や熱効率の向上を図った加熱殺菌装置が開発されてきており,多様な食品が市場に出されるようになった。これらの技術や装置の開発においては,伝熱工学の理論や装置改良が応用され,貢献してきている。とくに,缶詰の発明や無菌包装の技術などは加工食品の製造上画期的なものと言えよう。
一方,後者の視点では,加熱殺菌の対象となる微生物はしたたかで,栄養細胞にあっては熱ショック応答や表層ストレス応答を誘導して細胞死から免れようと努力するし,胞子においてはコア内を脱水させて抵抗性を高めている。これらの微生物の抵抗性は加熱殺菌のプロセスのデザインや評価に大きく影響する。
本稿では,物理的手法としての食品の加熱殺菌について概説し,その特性と問題をとりあげる。
Key words Heat sterilization(加熱滅菌)/Thermal death(熱死滅)/Heat resistance(耐熱性)/Food quality(食品品質).