日本防菌防黴学会

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防菌防黴誌(和文誌)

Vol. 34, No.12 (2006)


表 題 国際的な品質保証の方向性-バリデーションのあり方の考察-
著 者 山田 哲 (大塚製薬(株))
掲 載 防菌防黴, Vol.34, No.12, pp.785-793 (2006)

国際的な品質保証の方向性として ICH では, ISO 9001と従来の GMP とのブリッジングの役割を果たし, Management responsibility を明確に規定することにより, 継続的改善および顧客の満足の達成を目的とする指針作りが Q10として開始された。 各極の GMP を補完することにより各極間の整合性を強化する Q10の性格上, 日本の製薬企業では新たな枠組みが必要とされることにもなる。 日本企業の経営陣は今後 GQP および GMP 要件に上乗せの形で, 継続的改善および顧客の満足に対しても責任を負うことが求められる。
この根幹を成すのが Management responsibility であり, 製薬企業の経営陣はリーダーシップの発揮, 組織の確立, 種々要件に適合する品質システムの構築, ポリシー, 目的, および計画の策定, 並びにこれらの妥当性を評価する上で重要な Management Review の実施に対して責任を負う。
一方, Q8では Design Space と Regulatory Flexibility についての考え方が示された。 しかし, 原料の規格内での特性変動と標準操作手順中の運転パラメータとの組み合わせである Design Space は, フルスケールとパイロットスケールでは自ずと異なるため, 承認された Design Space 内で条件を動かすことは自由で, それを以って Regulatory Flexibility であるとするとその実効性が懸念される。
現実的には, ある程度のコマーシャルバッチ数が承認後に製造され, 特に原料特性の変動が製品品質へ影響する範囲および程度が把握されて初めて, フルスケールの Design Space の最適化または確定は行われ得ると考えられる。 従ってこの承認後変更の過程に対してこそ, 真の意味での Regulatory Flexibility が適切に適用されることが重要であろう。
また, 承認後変更の妥当性を検証する過程において, 予測的, 同時的または回顧的など従来のバリデーション手法が活用できることも重要であり, これらを正当化する要素についても若干の考察を行う。
Key words Quality System (品質システム)/ Continual improvement (継続的改善)/ Customer satisfaction (顧客の満足)/ Management responsibility (経営陣の責任)/ Management review (経営陣によるレビュー)/ Design space (デザインスペース)/ Regulatory flexibility (薬事規制上の柔軟性)/ Post-approval change (承認後変更)/ Existing products (既存製品).