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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.10 (2019)

表題:
食にまつわる有害微生物〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [3] レンサ球菌
著者:
松本昌門(愛知県衛生研究所生物学部)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.10,pp.437−441(2019)

A群レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)は,通性嫌気性グラム陽性球菌であり,血液寒天上で透明な溶血環を形成するβ-溶血を示す。病院では同定に迅速診断キットが用いられることが多くなった。疫学解析にはT血清型別に加え,Mタンパク遺伝子の塩基配列を用いたemm型別が用いられている。主な疾患としては咽頭炎,劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)がある。STSSは感染症法の5類感染症に分類され,β-溶血を示すレンサ球菌を原因とし突発的に発症して急激に進行する敗血症性ショック病態で全数報告疾患となっている。また,咽頭炎の大規模食中毒を起こすこともある。
A群レンサ球菌はファージによる形質導入,相同領域の組換え,1塩基置換等異なった種類の遺伝子変異を時系列的に重ねることで新しい毒素(酵素)の獲得や毒素(酵素)を大量に産生するようになり強毒化したことが明らかとなった。このことはSTSSが1980年代中頃に出現し,2010年以降増加傾向にあることの要因の一つと考えられる。

Key words:
Streptococcus pyogenes(A群レンサ球菌)/A群溶血性レンサ球菌咽頭炎/食中毒/Streptococcal toxic shock syndrome:STSS(劇症型溶血性レンサ球菌感染症).