日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.47,No.4 (2019)

表題:
室内環境における微生物汚染実態および制御[1]
室内環境におけるカビ汚染の実態 −環境要因とカビ−
著者:
浜田信夫(大阪市立自然史博物館)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.47,No.4,pp.169−176(2019)

カビが生育する要因として,水分,栄養,温度の3要素がよく挙げられる。個々のカビについて見ていくと,その要因の影響は実に様々だ。水分要因については,結露で長時間湿った状態にある窓に生えるカビ,陶磁器にしみ込んだ水分を利用しているカビ,溜まった室内塵がやや濡れたために生えるカビまである。カビの生えている環境の水分量や水分活性(Aw)は実に多様だ。また,室内環境中のカビの栄養源は必ずしも多くない。壁紙の上に生えるカビは,セルロースを分解する能力を持つものが多い。また,洗濯機や浴室には,界面活性剤を栄養源にするカビが繁殖している。温度要因についても,冷蔵庫のドアの部分にも10℃で生育する好冷性のカビが見られるし,熱水を使う食洗機の中には,耐熱性のカビが潜んでいる。文明の利器や新しい生活習慣は,これまで野外でごく稀にしか見られなかったユニークな特性を持っているカビに対して,新たな生育環境を生み出したのである。

Key words:
Nutrient(栄養)/Temperature(温度)/Fungal contamination(カビ汚染)/Moisture(水分)/Indoor environment(住環境).