日本防菌防黴学会

学会のご案内

関連情報

  • English

日本防菌防黴学会誌

Vol.46,No.5 (2018)

表題:
食中毒[4] 食肉およびその加工品による食中毒事例紹介:原因分析とその対策
著者:
鎌田洋一(甲子園大学栄養学部フードデザイン学科)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.46,No.5,pp.205−210(2018)

食肉・食鳥肉が原因の食中毒は,我が国で発生する食中毒全体の30%の事件数,25%の患者数を占める。一方,死者は70%に達する。牛肉では腸管出血性大腸菌が重要な食中毒病原菌となる。非常に少ない発症菌数,シガ毒素の強力な細胞致死毒性,同菌の環境耐性が死者をも発生させ,野菜など,食肉以外の原因食を発生させる。豚肉由来のサルモネラ食中毒は非常に減少した。衛生管理レベルの非常に高度な肥育が制御を可能にした。鶏卵を原因としたサルモネラ食中毒事例も減少した。鶏卵,液卵の衛生管理が高度化している。鶏肉のカンピロバクター汚染とその食中毒は最多発食中毒で,カンピロバクターの性状と多数羽処理のため,制御が難しい。馬刺し食中毒の原因は住肉胞子虫で,生きた虫体を食中毒発生の条件とするが,その症状は生虫の物理的障害によるものでなく,虫体内部の下痢誘発性タンパク質による。鹿には重症の熱性疾患を誘発するウイルスが高度に分布している。カレー・シチューを原因食とすることが多いウェルシュ菌食中毒は,旧来からの下痢毒素エンテロトキシンだけでなく,2成分毒素である新型下痢毒素によっても誘発されることが明らかになっている。

Key words:
食肉・食鳥肉/腸管出血性大腸菌/カンピロバクター/住肉胞子虫/ジビエ/ウェルシュ菌新型下痢毒素.