日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.46,No.1 (2018)

表題:
新興・再興感染症[4]
H. pylori感染症を制御する病原因子と宿主細胞応答
著者:
津川 仁(慶應義塾大学医学部 医化学),鈴木秀和(慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.46,No.1,pp.27−32(2018)

Helicobacter pylori感染は,胃潰瘍や胃がんの決定的なリスク因子である。H. pyloriの病原因子については,これまでの多くの研究成果により,その機能解明が進んでいる。一方,H. pylori感染者のうち胃潰瘍や胃がんを発症する個体は,ごく一部であることから,これらの疾患発症は,病原因子と宿主細胞との複雑な相互作用によって制御されていると考えられている。現在でも,H. pylori感染者の中から,どの様に胃がんを発症する個体がセレクションされるのかが明らかではない。本稿では,これまでに明確化されたH. pyloriの病原因子の特性と,近年,新たに明示された知見について概説するとともに,胃病態形成に関わる宿主応答についても紹介する。本稿を通じて,H. pylori感染者の中から如何にして胃がん発症者がセレクションされるのか,その機序について新しい考察が生まれることを期待している。

Key words:
BabA/CagA/VacA/HtrA/Ⅳ型分泌装置/胃がん.