日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.45,No.11 (2017)

表題:
新興・再興感染症[2] ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)
著者:
森内昌子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.45,No.11,pp.551−558(2017)

ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)は最初に発見されたヒトレトロウイルスで,全世界でキャリアは数千万人に及ぶが,地域性が濃厚で中南米やアフリカの一部に加え,先進国では日本が唯一の流行地である。HTLV-1は成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)のような重篤な疾患をキャリアの一部に引き起こす。ATLもHAMも近年治療法に大きな進歩が認められるが,ATLは今なお極めて予後が悪い疾患であり,HAMはQOLを著しく下げるため,臨床的に重要視される。感染様式は母子感染(主に母乳),性行為感染,輸血感染であるが,国内のキャリアの大半は母子感染によるものであり,またATLは母子感染によるキャリアに起こる。有効な発症予防法はないため,母乳遮断によって母子感染を防ぐことが現状で唯一可能な予防法であり,現在では日本全国全ての妊婦に対してHTLV-1抗体スクリーニング検査が実施されている。

Key words:
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)/成人T細胞白血病(ATL)/HTLV-1関連脊髄症(HAM)/母乳感染.