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日本防菌防黴学会誌

Vol.44,No.1 (2016)

表題:
活性酸素ならびにフリーラジカルの化学,化学反応ならびに生体との反応
著者:
新谷英晴(中央大学理工学部)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.44,No.1,pp.19−30(2016)

活性酸素について概略を述べた。生体分子,とくに脂質の非酵素的な過酸化反応という観点から眺めると,活性酸素は,1)ラジカル反応を開始させる活性種,2)ラジカル連鎖反応を続ける活性種,および3)非ラジカル的に酸化する活性種の3種に大別される。これらは全てそれぞれ重要な作用をするが,ラジカル種の方が非ラジカル種より遙かに重要と言える。ラジカル的な脂質過酸化反応のトリガーとなる活性種が何であるかについて議論されているが,反応の場,環境,状況に応じて,それぞれが大なり小なり関与している。それぞれの活性種がどこで生成するのかを極めることが重要である。生体への影響の大きさから考えると,膜の中などで生成したラジカルが一体どれだけ連鎖を続けるのかがより重大である。本解説では非酵素的な,コントロールされていない脂質過酸化反応について述べてきたが,生体にあっては合目的な,酵素による過酸化反応も勿論,常に並列的に起こっている。また,活性酸素種は生体にとって常に障害をもたらす厄介な物とは限らず,場合に拠ってはそれを利用し,生命を維持していることはいうまでもない。活性酸素種も両刃の剣である。今後,反応の場の効果について,特にin vivoでのフリーラジカルの反応性について詳細に解明することが重要であると考える。

Key words:
活性酸素/フリーラジカル/ヒドロキシラジカル/スーパーオキシドアニオンラジカル/一重項酸素/ペルオキシラジカル.