日本防菌防黴学会

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日本防菌防黴学会誌

Vol.42,No.3 (2014)

表題:
感染症の現状と展望[6] バイオフィルム感染症
著者:
岩澤篤郎(東京工業大学)
掲載:
日本防菌防黴学会誌,Vol.42,No.3,pp.141-155(2014)

バイオフィルムは微生物そのものと,多糖体やポリペプチドなどのマトリクスから構成される。細菌が付着した後に発現するQuorum sensingによりバイオフィルムは発達していくが,ヒトの細菌感染症の原因の多くを占め,治療・対策に苦慮しているのが現状である。留置カテーテルやインプラント等の医療器材に形成されるバイオフィルム,慢性感染症の原因としてのバイオフィルム,これらに関与する細菌は,表皮ブドウ球菌,緑膿菌,黄色ブドウ球菌,大腸菌などが主であるが,従来の培養法以外の分子生物学的手法を用いるとより多くの菌種が検出されている。対策として,抗生物質のみならず,天然物の使用,銀などをコーティングした生体材料の処理方法,抗菌光線力学療法や大気圧プラズマなど検討が進んでいる。バイオフィルムが形成される場所・菌種などにより様々な特性を持つことから,特性に合わせた適切な防菌防黴剤の検討が今後望まれる。

Key words:
バイオフィルム/Quorum sensing/留置カテーテル/慢性感染症.